2025.09.19
膵臓がんの近年の動向
膵臓がんは、日本で年々増加しているがんのひとつです。年間の新規患者は4万人を超え、死亡者数も同じ規模となっており、がんによる死亡原因の第3位に位置しています。患者数は大腸がんや肺がんに比べれば少ないものの、死亡数が患者数に近いことから、膵臓がんがいかに予後の厳しい病気であるかが分かります。わかりやすく言うと、膵臓がんになった方の多くが最終的に膵臓がんで亡くなってしまうほど、生存率の低いがんなのです。 5年生存率はおよそ1割程度で、他のがんに比べて大幅に低いのが特徴です。その大きな理由は、膵臓がんが早い段階では症状をほとんど示さず、症状をきっかけに診断されたときにはすでに進行している場合が多いことにあります。 膵臓がんのリスク因子としては、喫煙や糖尿病、肥満、慢性膵炎、膵のう胞、家族歴などが挙げられます。遺伝的な背景が関わることもあり、膵臓がんや乳がんの家族がいる場合には注意が必要とされています。そのため、こうした膵臓がんの危険を持っている人を対象に定期的に膵臓の検査を行う取り組みも進められています。 診断の面では、従来のCTやMRIに加え、**超音波内視鏡検査(EUS)**の重要性が高まっています。EUSは消化管の内側から膵臓を間近に観察できるため、数ミリ大の小さな腫瘍を見つけることが可能です。また、EUSを用いて膵臓の組織を採取し、がんかどうかを確定できることも大きな利点です。膵臓がんは「早期に発見できるかどうか」が治療の成績に直結するため、EUSは今後ますます重要な検査になると考えられています。 治療については、根治を目指すには手術が必要ですが、診断時に手術が可能な患者は限られています。手術ができない場合は抗がん剤や放射線治療が行われていますが、依然として生存率の改善は課題です。ただし、抗がん剤の組み合わせの工夫や、患者ごとの体質や腫瘍の特徴に合わせた治療選択が広がりつつあり、少しずつ前進が見られています。 世界的にも膵臓がんは増加傾向にあり、今後も患者数は増えると予測されています。その一方で、診断技術の進歩や、一人ひとりに合わせた治療の工夫により、早期発見と予後改善への道が開けつつあります。
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