2025.10.14
家族性膵がんについて
家族性膵がんとは
膵臓(すいぞう)は、胃のうしろにある小さな臓器で、消化を助ける酵素や血糖値を調整するインスリンなどを分泌しています。 この膵臓にできる癌が「膵がん」です。膵がんは進行が早く、初期には症状が出にくいため、発見されたときには手術が難しいことも多い病気です。 その中で「家族性膵がん」と呼ばれるものがあります。これは、同じ家族の中で膵がんになる人が複数いる場合を指します。
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家族性膵がんの定義 医学的には、一親等(親・子・兄弟姉妹)の中に2人以上の膵がん患者がいる場合、家族性膵がんとされています。 膵がん全体の中で、このような「家族性」と考えられるものはおよそ5〜10%程度です。 ⸻ なぜ家族に多いの? 理由のひとつは「遺伝」です。体の設計図ともいえる遺伝子に、がんになりやすくなる変化があると、その体質が親から子へ受け継がれることがあります。 たとえば乳がんや卵巣がんで知られる BRCA2遺伝子 の変化は、膵がんのリスクも高めることが分かっています。また、PALB2遺伝子 や CDKN2A遺伝子、STK11遺伝子なども関係していることがあります。これらの遺伝子の中には、皮膚の悪性黒色腫や大腸がん、乳がんなど、他のがんとも関連するものもあります。 ただし、「家族に膵がんがいる=必ず膵がんになる」というわけではありません。 遺伝だけでなく、喫煙や飲酒、肥満、糖尿病などの生活習慣も関わって、発症するかどうかが決まってきます。
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家族性膵がん家系とは? 同じ家族の中で何人も膵がんを発症している家族のことを「家族性膵がん家系(かけい)」といいます。 このような家系では、親や兄弟、子ども、さらには祖父母の世代まで膵がんが見られることがあります。 こうした家系の方は、がんの原因となる遺伝子の変化を持っている可能性が高く、一般の人よりも膵がんのリスクが高くなります。 たとえば、親や兄弟に2人膵がんの方がいれば6倍以上、3人いれば30倍ほどリスクが高いという報告もあります。 日本では「家族性膵がん登録制度(JFPCR)」という仕組みがあり、専門の医療機関がこうした家系を登録して研究しています。登録すると、専門医による定期的な検査(サーベイランス)や遺伝カウンセリングを受けられる場合もあります。 自分の家族が家族性膵がん家系にあたるか気になる場合は、こうした専門機関に相談することが大切です。
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どんな症状が出る? 膵がんは初期には目立った症状が出ません。進行すると以下のような症状がみられることがあります。 ・お腹や背中の痛み ・体重の減少 ・黄疸(皮膚や白目が黄色くなる) ・新しく糖尿病を発症する こうした症状があるからといって必ず膵がんではありませんが、家族に膵がんの人がいる場合は早めに医療機関を受診することが大切です。 ⸻ 検診や検査について 膵がんのリスクが高い家族の方には、定期的な検査(サーベイランス)が勧められることがあります。 特に、内視鏡を使った超音波検査(超音波内視鏡検査、EUS)は小さな病変を見つけるのに役立ちます。 以前は超音波内視鏡検査が受けられる医療機関は少なかったのですが、最近ではクリニックでも受けることができる地域があります。 日本でも専門施設で「ハイリスク群の早期発見プログラム」が行われており、家族歴がある方は相談してみると安心です。
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予防につながる生活習慣 膵がんを完全に防ぐ方法はありませんが、リスクを下げる工夫はできます。 ・禁煙:タバコは膵がんの大きな危険因子です。 ・飲酒を控える:特に大量の飲酒は膵臓にダメージを与えます。 ・バランスのとれた食事:野菜・果物を取り、肥満を避ける。 ・適度な運動:生活習慣病を予防することが膵がん予防にもつながります。
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まとめ 家族性膵がんとは、同じ家族に膵がんの患者が複数いる場合を指し、遺伝や生活習慣が関わると考えられています。 特に、複数の世代で膵がんが見られる「家族性膵がん家系」では、専門医による検査や遺伝カウンセリングが重要です。 膵がんは早期発見が難しい病気だからこそ、家族歴がある場合は定期的な検査や生活習慣の見直しが大切です。 「家族に膵がんの人がいる」と知ることは不安かもしれません。でも、それは「リスクを早めに知ることで、予防や早期発見につなげられるチャンス」でもあります。 自分や家族の健康を守るために、ぜひ一度医療機関に相談してみてください。
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